いつの間に終わってたんだよう!

蒼天航路(35) (モーニング KC)

蒼天航路(35) (モーニング KC)

蒼天航路(36)<完> (モーニング KC)

蒼天航路(36)<完> (モーニング KC)

恥ずかしながら今更完結したと言う事を知った私・・・。
「蒼天の終わり=曹操の死」
が近付いてるから、そろそろ終わっちゃうかも?とは思ってたんですが、最近本屋に行ってなくて
気付きませんでした。
最近立ち読みもしてないし・・・。
1週間以上前に出てたんですね・・・。こいつは
「1週遅れの心配だぜ、翼徳」
ですね(笑)。
しかしとうとう終わりましたか・・・最終巻と言う事でかなり無茶な展開てんこもりでしたが、
「正史の記述を下敷きにしつつ、ある意味良く出来た物語」
になってました。
でも(以下ネタばれ含む)「若干駆け足だったかな?」「みんな高齢なのに妙に若い」「最終回にありがちな夢落ち」というのはさておき

馬忠の扱い」
関羽を討ち取ったのが〇〇」

ってのは・・・とどめは

丁奉が〇〇になってた」

のが・・・「ヴェ!?」って思わず見た瞬間うめいちゃいました。
丁奉ってのちの孫呉重臣で、孫権の後継者騒動でも活躍する大立者なんですけどね・・・。
あれじゃまるでかの有名な

「アニメ三国志やないですか!」

って感じ(笑)。劉備諸葛亮の‘大人の’水魚の交わりみたいな(笑)。〇転換は気の毒でっせ(笑)。



まあでも軽軽しく前線に出たがる君主ってどーよ?とか巻末コメントで著者がコメントしてるように
「白髪三千丈な各武将の逸話・人物像の誇張ぶり」
はすごかったですが、やっぱ面白い漫画でした。
まったく架空でもなく、所々正史の記述を混ぜてる所が、史・演義と見比べてみると面白い所ですよね。

「何あんのナルシーっぷり(ああいうキャラにもってくとは思いませんでしたが)」
「司馬仲達(いの漢字がなーい)の首の回転力(笑)」
曹操の葬儀で血を吐く許緒」
「去って行く青州兵」

なんかの部分は思わず‘にやり’としますよね。
現在三国志の物語は、小説・漫画等々かなりの数に上りますが、その中でも特に「蒼天」は
「生臭くて、泥臭い。独自の人間色を散りばめた誇張脚色物語」
に仕上げてましたよね。
こういう物語って内容の真偽・史書=現実との相違って物を非難される事が多いですが、
そう言う事を攻撃するのは
「‘演義’と‘正史’を読み比べて劉備を偽善者呼ばわりする」
のと同じ事でしょう。演義とてあくまで
「史実を下敷きにした物語」
なんですから。
そう言う意味で蒼天は
「非常に面白い三国志物語の切り口・新しい感覚のリボーン」
だったと思います。



まあ終盤の
関羽の持ち上げっぷり、神格化」
はちょっとやりすぎかな?という気もしましたが(苦笑)。
まあその辺は所詮「書物でしか三国世界・中国を知らない私」の感覚には分からない部分でしょう。
実際中国人の
関帝への思い入れ」
ってのはまさに‘信仰’ですから。歴史上の偉人への尊崇という次元を遥かに超えているんですよね。
私達日本人から考えると想像を絶する物があるようですね。
私見ですが
「仏教・イスラム教・キリスト教
世界三大宗教と言いますが、中国人の人口・その生活との関わり具合を考えると
「4大宗教にして関帝教をいれてもいいんじゃないか?」
ってぐらいに思うんですが・・・。
ちと大げさかな、私も「蒼天・関羽に毒されたか・・・。
孫権
「心に入り込んだ関羽を斬れい!」
って一喝されそう(笑)。
実際35・36巻の関さんはカッコ良過ぎたなあ、劉備の出番なんざほとんどなかったし(笑)。
なんか
「巨大なる関羽とそれに挑む孫呉の武将の物語」
になってたような・・・、著者もいってたように
「作者も抑えきれない関さんの暴れっぷリ」
でしたね。



ただここで、史実に目を向けて見ると、実際・現実の関羽荊州戦での戦術・戦略ははっきり言って稚拙かつ緒粗末なんですけどね。
荊州保全・さらなる進撃、には
孫呉との協調体制(出来れば共闘・最低でも不戦の約)」
が必要不可欠だったのに、それを自ら破棄してしまったんですね。
孫呉の方は、「姻戚関係を絡めた同盟まで考える低姿勢」で来たのに
「自力のみで占領しなければ領土割譲・功を奪われる」
と言う事を怖れて、にべもなく同盟の話を断ったんですよね。
そればかりか、出陣に際して「呉に無断で倉庫の糧食を借用した」んですよね。
ここまでされたら孫権じゃなくても誰でも怒りますよ。
呉からすれば、ただでさえ蜀に対しては「南郡占領に際して助力をしたのに」ですよ・・・。孫権からすれば
「怒り心頭!聖人君子でもなければ我慢できんわい!」
だったでしょう。
でもまだ呉との関係を悪化させた(関羽にどこまでその自覚があったかはわかりませんが)事だけなら、大丈夫だったかもしれません。
外に新たな反感を買ったのだから、内部の結束を固める努力をすれば。
呉も危険を犯す・魏と結ぶ屈辱を考えてしぶしぶ我慢したかもしれません。
だが結局
「蜀軍内部でも人の和を欠く」
事になるんですよね。
もともと関羽の性格は
「任侠・上に逆らい、下々に優しい」
ってもんで、それゆえに部下には慕われたし、今にまで続く民間の信仰ってものを集めてる訳ですが、同時に上に逆らう性格で
劉備以外の目上・同僚には嫌われていた」
んですよね。
言うなれば、君主と義兄弟な事を鼻にかけて、態度が大きかった訳で・・・。
その事は孫呉への高圧的な姿勢」ってものにも表れてますし、

馬超の重用に対する抗議」
黄忠五虎将軍に任じられた事への不満(自分と同格に扱われた事への不満)」

なんてエピソード見るとその辺は明らかですが・・・。
で結局その性格故に友軍の将軍たちから嫌われて、後方補給拠点の将はあっさり降伏、
頼みの援軍は来ないという事態に陥ってしまったんですね。
その辺の事情考えると、その時援軍を送らず関羽を見殺しにしたと言う事で演義・ゲームなんかではものすごく悪者にされてる孟達なんか逆にかわいそうになるんですよね。
「あいつはあの時そうするしかなかったよ、状況的に援軍は送れなかったし、その後の展開じゃ裏切るしか・・・」
って感じで。理不尽な上司に苛められ、その上司の自滅のような死の怒りの矛先を向けられて・・・。むしろ後の黄権の降伏のエピソードより同情できる気がするんですが・・・。
蒼天ではその辺比較的好意的に書かれてましたね。



結局関羽ってのは戦歴を見ても、
「個人的武勇を頼みとする武侠的性格の武人」
であり、‘武将・指揮官’ではなかったんですね。
我が強く、妥協を知らず、他に傲慢だった。
そういった関羽の「人の和を省みない」性格が

兵力で劣っている以上
「二方面作戦を避けなければならない」
「自軍の一致団結・内心同和が大前提」

だった荊州という三勢力の交錯する戦場において、致命的になったんですね。
まさに自滅!だったと言えるでしょう。
またこれは、そういう「人の和を省みない」関羽を指揮官にしておかざるを得なかった、亡命政権であり、さまざまな経歴を持つ人物が混在している蜀の
「複雑な人物事情」
というものが垣間見えるエピソードですが・・・。



なんか一説では関羽があれほど中国人民に慕われて・奉られてる理由ってのが
「下々に優しかった」
事。関羽の死後、立て続けにその死に関わった者が亡くなった事で
「崇り神としてあがめた」
って理由の他に、
「無欲で良く目下の者に施しをした、だから奉ってそのご利益にあずかろう♪」
ってのもあるそうです(苦笑)。だから関帝は商人にもてはやされたし、関帝廟は世界中の華僑の在住地にあるんだそうですが・・・。
がめついと言うか、ちゃっかりしてると言うか・・・。



なんにせよ、色々意見はあるでしょうが、「蒼天航路」面白かった!!!
ああいった終わり方もありかな・・・。
終盤の怒涛の展開は
「ネオ三国志の面目躍如!」
と言う所ですか。関さんの死に様は思わず鳥肌もんでした。
ちょっと終わって淋しい気持ちと、
「幸福な作品を見れた・・・」
って感じが残りましたね。これで終わりと思うと淋しいですが、やはり
曹操の死」
で終わるべきだったんでしょうね。それ以上は蛇足にしかならんでしょうし・・・。
私個人的には、ゴンタさんには、その曹操死後の話じゃなくて、今までの展開で
「はしょられてた脇役の外伝」
ってのを書いて欲しいって思いますが・・・。
さてこんな所で、今夜はこれにて、コンゴトモヨロシク・・・。